川上 毅

第18回 「なるほど川上さん」は相続のお話の7回目

今回は相続対策と危険性について解説していきます。
相続対策とはなんでしょうか?何もしなければ相続税が高額になり、相続人の負担が増すので、相続財産の評価額を下げようとすることです。一般的に相続対策として考えられるものは下記の通りです。

① 遺言書を作成する。
② 借金をしてアパートやマンションを建てる。
③ 生前贈与をする。
④ 不動産の購入をする。
⑤ 生命保険に加入をする。
などなど

① の遺言書を作成することが相続対策にどうしてなるのでしょうか?
遺言書の最大の特徴は、自分の意思どおりに財産の分割を指定し、法定相続分に優先して分割を実現できることです。財産の分割を指定することで、大切な家族の「争族」を防ぐことができます。ただし、気を付けなくてはならないのは遺留分を侵害しないことの配慮です。遺言書で相続人以外の人や団体等にも遺贈ができることも重要です。
遺言書は、遺産分割の指定だけではなく「付言事項」で家族や大切な人、生前お世話になった方々へメッセージや感謝の気持ちを伝えることもできます。遺言書というと、財産の分割の事に終始しがちですが、家訓や伝統など伝えたいことも記載することが一番大事な相続ではないかと私は考えます。
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」は手軽かつ自由度が高い方式ですが、すべて自筆で書かなければならないので、筆不精の方にはハードルが高いかもしれません。ただし財産目録はパソコンで作成しても構いません。さらに令和2年7月から「自筆証書遺言保管制度」が始まりましたので、法務局で「自筆証書遺言」の保管をしてくれます。これにより、紛失・亡失や死後に遺言書が発見されないトラブルや、破棄・改ざん・隠ぺいなどの防止にもなりますので、活用されてはどうでしょうか!また、遺言執行人を指定しておくのもよいかもしれません。
「公正証書遺言」は信頼性の高い方法で、法律の専門家である公証人が2人以上の立ち合いのもとに厳格な方式に従い作成します。遺言の内容についても公証人の助言を受けることもでき分割で悩んでいる方にはこちらの方式の方が向いていると思われます。ただし、作成には財産価格に応じた手数料が必要になりますが公証人がその原本を厳重に保管してもらえますし、家庭裁判所での検認手続きは不要となります。

遺言書で財産の分割を指定することで、相続トラブルを防ぐことも相続対策の一環であることは間違いありませんが、その分割で後々、相続人が困ってしまうこともありますので、遺言書を作成する場合には、分割について相続人の意見も聞いて参考にされた方が良いかもしれません。
  よくある例を挙げますと、3人兄弟に遺産を分割する際に、長男に自宅の土地・建物を相続させ、残りの二人に現金を分割させるというものがありますが、自宅の土地・建物を相続する長男には現金が一切渡らないという例です。この場合、固定資産税や修繕費などはすべて長男の負担になりますし、お墓や親せきづきあいなども長男が引き継ぐことになるでしょう。長男がその家に住んでいるならまだしも、別に住居をもっているケースもあります。そうなると長男のお金の負担がかなりかかりますので、分割の際に現金を渡すようにする配慮は必要になると考えます。
次回の「なるほど川上さん」は②の借金をしてアパートやマンションを建てる!について解説していきます。

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