令和5年4月1日から年金の新しい制度「5年前みなし繰り下げ制度」が施行されるのですが、ご存じでしょうか。
日本年金機構HPには下記の様に記載があります。
「令和4年4月から老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられ、年金の受給開始時期を75歳まで自由に選択できるようになりました。
これを踏まえて、令和5年4月から70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるよう制度改正が行われ、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになります。これを「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2023/r5_kurisage_kaisei.html
これだけでは、よく分からないという方も多いかとおもいますので、例題等を挙げながら説明できればと思います。
まず、現状の年金の繰り上げ・繰り下げ制度に関して簡単にご説明します。
本来、年金の受け取り開始は65歳からとなっていますが、繰り上げを行うと最短60歳から年金を受け取ることができ、
逆に繰り下げを行うと、最長75歳から年金受け取りを開始することが出来ます。
(※1952年4月1日以前生まれの方は最長70歳迄)
それにより受け取れる年金の金額が変わってきます。
・繰り上げを選択した場合、受け取れる年金額はひと月0.4%減額(最大24%減額)
(※1962年4月1日以前の生まれの方は、0.5%マイナスになるのでご注意ください。)
・繰り下げを選択した場合、受け取れる年金額はひと月0.7%増額(最大84%増額)
という形になります。
年金は法律により、自ら請求しない限り受け取れず、時効は5年となっているのですが、
65歳到達以降に受取をしようと考えた時には、
- 未受給分を遡って請求(最長5年)し、その後は65歳からの基本の年金額を受け取る
- 繰り下げ受給を申請し、繰り下げによって増加した年金を今後受給する
という2つの方法がありました。
ただ、ここで問題点が1つ発生します。
繰り下げ年齢が最長70歳だった時には、最長5年遡ったとしても65歳で、本来の年金支給開始年齢だったので、特に問題はありませんでしたが、
2022年4月の改定により繰り下げ年齢が最長75歳に変わった為、上記①の方法を選択すると、時効である5年より前の年金が消失してしまうという事となります。
以下のようなケースで考えてみましょう。
72歳の男性。今までは働いていたこともあり、まだ年金を受け取っていない状況。
今回仕事を引退するタイミングで年金の手続きをすることに。
「72歳迄繰り下げたから、結構増えてるよな。
でも、年金の請求は時効5年だから67歳まで遡って5年分受け取ることも出来る
みたいだ!
でも、5年遡って67歳だったら、その分繰り下げ受給として、増額されないの?」
といったことが起きてきます。
今回のケースの場合、現行の制度だと時効によって65歳~67歳の年金は消滅してしまいます。
なので、今回の「5年前みなし繰り下げ制度」では、
遡って年金を受け取る方法を選択したとしても、請求の5年前(上記ケースだと67歳)時点で繰り下げ申請した人と同じとみなし、その分増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになり、その後も67歳で繰り下げした金額で年金を受け取ることができるように変更となります。
現時点で70歳未満の人は2023年4月より新制度が導入されることで選択肢が増えた印象ですが、基本的には「5年分遡るのか?」「繰り下げ受給とするのか?」という点では現行と大きく変わりません。
どうしても「一番良いタイミングで年金を受給したい」と考えがちですが、
この先のことは誰にも分かりません。
ご自身や家族が病気や介護になって、まとまったお金が必要になるかもしれないし、
制度がまた変わることも想定されます。
ですが、そういった不測の事態を想定した上で本当に困らないように準備・対策をすることはできます。
現状の制度がどうなっているかを頭に入れつつ、今から出来る対策やライフプランを考えることは本当に大切になってきます。
今回は、実際に繰り下げをした場合、どのくらい年金額がUPするのか…といった細かい数字に関しては記載しませんでしたが、そういった数字の部分も踏まえ、ライフプランの作成や対策などのご相談に乗ることができます。
気になった方はご相談いただければと思います。